「曲を作りたいけど、どこから始めればいいのか分からない」
そんなふうに感じたことはありませんか?
いつもスムーズに始められるわけではありません。
むしろ、“なんとなく浮かんでいる感覚”を、どうやって音に変えるかに悩むことの方が多いんではないでしょうか。
自分の中にある音楽の種を見つけるために、「問いを立てる」という方法がいいのではと思います。
今回は、感覚から音を立ち上げていく5つの問いを紹介したいと思います。
誰にでも使ってもらえる“抽象的だけど役に立つテンプレート”なるのではないでしょうか。
1. どんな景色を思い出したい?
音楽を作る前に、まず思い浮かべるのは「音」よりも「情景」かもしれません。
記憶に残っている風景や、頭の中でぼんやり浮かぶ映像には、
すでに音楽の種が含まれていることがあります。
この問いは、“どんな世界を描きたいのか”を探るものです。
• 例:夕暮れの帰り道、誰もいない公園、夏の夜のプールの音…
• 浮かんできた景色が、音色、テンポ、キー感のヒントになります。
音楽は、“空気感”の芸術です。景色が浮かぶと、その空気をどう音で表現するか、という方向性が見えてきます。
2. その景色はどんな“距離感”で聴こえてくる?
音には「近くにいるような音」と「遠くから響いてくる音」があります。
これは、リバーブ(残響)のかかり方や音色の調整、音のレイヤー感(音の重なり)などによって変わります。
たとえば、部屋の中で歌われているような声と、大きなホールで鳴っているような声では、同じメロディでも感じ方が全然違いますよね。
この問いでは、音の距離感や空間の広がり方をイメージします。
• 例:モノラルのような近さ、ホールで響くような広さ
• 音の配置やミックスの方向性に自然とつながります。
3. その感情にふさわしい“揺れ方”って?
音楽は静止していません。常に“動き”があります。
その動きが、どう“揺れているか”によって、曲が持つ感情も変わってきます。
ここでの“揺れ”とは、コード進行、メロディライン、テンポの揺らぎ、リズムのグルーヴなど。
たとえば:
• 半音進行の切なさ
• じわっと転調していく曖昧さ
• 不意に現れるコードチェンジのドラマ
すべてが、その曲の「気持ちの揺れ」を形にしてくれます。
4. どの瞬間に“言葉にならない余白”を残したい?
私が音楽でいちばん好きなのは、“何も鳴っていないのに何かがある”瞬間です。
リズムが止まった間や、コードが次に進む前の“ため”、
メロディが語り終えた後に残る“余韻”も、音楽の大事な一部です。
この問いは、「あえて鳴らさない部分」を意識するためのもの。
削ることで、音がもっと美しく響くこともあります。
• 例:歌詞の直後に2拍だけ静寂がある
• ベースが一瞬消えることで、再登場が印象的になる
• ドラムのフィルを入れないことで空気が引き締まる
5. 聴き終わったとき、どんな感覚だけが残っていてほしい?
すべての曲は、最後に“何か”を残して終わります。
それは歌詞の内容だけじゃなく、音の雰囲気や残響、メロディの印象だったりします。
この問いは、「この曲のゴールってなんだろう?」という視点。
それが見えると、曲全体の構成や展開も見えやすくなります。
• 例:懐かしさがじわっと残る
• 説明できないけど、胸に引っかかる感じ
• 余白だけが記憶に残る
この「5つの問い」は、誰でも自分なりに答えを見つけられるものです。
具体的な技法や理論よりも前に、“音楽の根っこ”に触れてほしいと思って作りました。
このテンプレートを、自分の中にある「音の感覚」を言語化するきっかけにしてもらえたらうれしいです。
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